実践!哲学教育ノート

「協力する」ってどんなこと?:小学校で問いを深める哲学対話

Tags: 哲学対話, 協力, 小学校, 授業実践, 対話

はじめに:なぜ、小学校で「協力」を哲学的に考えるのか

小学校の子どもたちは、日々の生活や学習の中で「協力」を求められる場面に数多く出会います。清掃活動、係活動、グループ学習、運動会の練習など、一人ではできないことをみんなで成し遂げる経験は、子どもたちの成長にとって非常に重要です。

しかし、「協力しましょう」と呼びかけるだけでは、子どもたちにとって「協力」が単なるスローガンや、時には面倒なこととして捉えられてしまうこともあります。

「協力するって、そもそもどういうことだろう?」 「なぜ、私たちは協力する必要があるのだろう?」 「協力することの難しさや、楽しさってなんだろう?」

こうした問いを子どもたちと一緒に深掘りすることで、彼らは「協力」の本質や価値を自分事として捉え直し、より主体的かつ意味のある協力へとつながる可能性があります。哲学対話は、このように身近なテーマをじっくりと考え、多様な意見に触れることで、子どもたちの思考力、対話力、そして他者への理解を育む有効な手法です。

本記事では、小学校高学年を中心に、「協力」をテーマにした哲学対話の実践例とそのポイントを紹介します。

「協力する」を哲学対話で探求する活動例

1. 問いかけの準備:協力が必要な場面を提示する

2. 問いを立て、共有する

3. 対話を進める

4. 振り返り

実践のためのステップと準備物

  1. テーマ選定と問いの準備: 「協力」に関する具体的な場面や、子どもたちに投げかけたい中心的な問いを準備する。関連するイラストや短いエピソードがあると導入しやすい。
  2. 場の設定: 子どもたちがリラックスして発言できる、円になるなどの座席配置が望ましい。
  3. ルールの確認: 「人の話を最後まで聞く」「人の意見を否定しない」「発言しなくてもよい」「答えは一つではない」など、哲学対話の基本的なルールを確認する。
  4. 導入: 協力が必要な具体的な場面を提示し、テーマへの関心を高める。
  5. 問いの共有と選定: 子どもたちからの疑問や考えを引き出し、対話の中心となる問いを決める。
  6. 対話: 問いを中心に、子どもたちが自由に意見を交換し、深掘りしていく。教師は進行役として、全ての意見を受け止め、問いかけで思考を促す。
  7. 振り返り: 対話を通して考えたこと、感じたことを整理し、共有する。
  8. 準備物: 板書のための黒板やホワイトボード、マーカー。必要であれば、子どもたちが考えを書き出すためのノートや付箋。導入で使うイラストや短い物語。

実践におけるポイント、注意点、よくある課題

想定される子どもの反応や対話の例

まとめ

「協力する」というテーマでの哲学対話は、子どもたちが自分たちの日常生活や集団活動を異なる視点から見つめ直し、深く考える貴重な機会となります。彼らは、協力が単なる指示やルールではなく、他者との関係性の中で生まれ、様々な意味を持ちうる複雑な営みであることを肌で感じ取るかもしれません。

この対話を通して、子どもたちは協力することの難しさや、それでもなぜ協力が必要なのか、協力によって何が得られるのかといった問いに向き合います。そして、多様な考えに触れる中で、他者の視点を理解し、自分の考えを言葉にする力を育んでいきます。

多忙な学校現場で一から哲学の授業を始めるのは難しく感じられるかもしれませんが、今回ご紹介したような身近なテーマであれば、総合的な学習の時間や学級活動、あるいは道徳の授業の一部として短時間でも取り入れることが可能です。子どもたちの「考えるって面白い!」という気持ちや、互いの意見を聞き合える温かい学級の雰囲気づくりに、哲学対話の手法をぜひ活用してみてください。