実践!哲学教育ノート

「見えるもの、見えないもの」ってなんだろう?:子どもの認識世界を探る哲学対話

Tags: 認識, 哲学対話, 小学校, 授業実践, 思考力

見えるものと見えないもの、子どもたちの素朴な疑問から哲学対話を始める

子どもたちは日々、様々なものと関わりながら世界を認識しています。その中には、触れたり見たりできるものもあれば、そうでないものもあります。「空気は見えないけど、どうして吸えるの?」「心ってどこにあるの?」「考えは見えないけど、どうやって生まれるの?」といった、見えないものに関する素朴な疑問は、子どもたちの尽きない探求心の現れです。

これらの疑問は、哲学的な問いへと繋がります。存在とは何か、認識とはどのように行われるのか、目に見えないものにはどのような価値があるのか。こうした問いについて子どもたちと共に考えることは、彼らの思考力を深め、多様な存在のあり方に気づく機会となります。ここでは、「見えるもの、見えないもの」をテーマにした哲学対話の授業実践例をご紹介します。

授業実践例:身近な「見える」「見えない」から問いを立てる

この実践は、身の回りの具体的なことから出発し、徐々に抽象的な概念へと議論を広げていくことを目指します。特別な教材は不要で、普段の教室環境で実施できます。

1. 導入:見えるもの/見えないものを挙げてみよう(10〜15分)

2. 問いの設定:「見える」「見えない」は何が違う?(5分)

3. 対話の展開(20〜30分)

4. まとめと振り返り(5〜10分)

実践におけるポイントと注意点

成功事例と失敗事例から学ぶ示唆

成功事例:

失敗事例:

学べる示唆:

失敗事例からは、事前の問いの検討、全員が発言しやすいように工夫する(ペアワークを取り入れる、発言の機会を平等にする)、脱線しそうになったら優しく問いに戻す、多様な意見を引き出すファシリテーション技術の重要性が再確認できます。特に小学校低学年では、具体的な体験や例を結びつけられる問いかけが効果的です。また、一度に多くを求めすぎず、「今日は一つの面白い考えに出会えたね」といった小さな成功体験を積み重ねることも大切です。

多忙な現場でも取り入れやすい工夫

まとめにかえて

「見えるもの、見えないもの」というテーマは、物理的な世界だけでなく、内面世界や他者との関係、社会の仕組みなど、様々な側面に繋がっています。この哲学対話を通して、子どもたちは自分の認識の枠組みに気づき、見えないものの中にも確かに存在する価値や、多様な存在のあり方について思いを巡らせる機会を得るでしょう。そして、それは子どもたちの「考える力」「問いを立てる力」「対話する力」を育む大切な一歩となると考えられます。ぜひ、身近なところから哲学対話を取り入れてみてはいかがでしょうか。